ドラムフレーズの聞き取り方・練習の仕方
まず音源にあわせて、ハイハットを四分音符で演奏します。元の音源にハイハットが含まれていなくても構いません。単にビートを把握しやすくするために、ガイドラインとしてハイハットを演奏します。
次に、ハイハットを演奏しながら、キックだけを集中して聞き取ります。キックはビートの性格を決定する最重要な要素です。キックが聞き取れたら、四分音符のハイハットとキックだけを、何回も繰り返して演奏してみましょう。そうすると、先ほどまで馴染みがなく、聞き聞取りづらかったビートが、意外と理解できるようになっていることに気付くでしょう。ハイハットのガイドラインとキックを手がかりすることで、その他のスネアやタムといったパートがどの位置にあるのかを理解できるようになったのです。
これは常にいえることですが、対象を分析する際、全てを同時に捉えようとすると失敗します。しかし、たった一つに集中することから始めると、必ず成功します。これはとても重要な原則です。人間は一度に多くを処理することはできないので、小さく小分けした対象に限って考察を進め、最終的にそれらを組み合わせ、大きく複雑な構造物として認識するようにしたほうがいいでしょう。最初から全てを理解しようとすると、分からない部分が必ず出てきます。その一部の分からない箇所のせいで、あなたは全てがわからないような気持ちになり、分析することを放棄するでしょう。理解できるチャンスがあったのにも関わらず、過剰な完璧主義のせいで、全てを放棄してしまうのです。大事なことは、対象を自分の理解できる範囲に絞ることです。例え他人が、「なんてつまらない考察をしているのだ」とあなたを馬鹿にしても気にしてはいけません。わかってもいないのに、わかった気になるよりは何倍もマシです。繰り返しになりますが、分析する際には、シンプルなたった一つ対象に集中することから始め、最後に全てを組み合わせ、大きく複雑な構造物として認識するようにしましょう。他に近道はありません。
さて、ドラムフレーズの聞き取りに話を戻しましょう。今、バスドラムを聞き取れたところです。次にスネアを聞き取ります。ここでは一度キックのことは忘れて、ガイドラインとして演奏しているハイハットとの関係でスネアを把握するといいでしょう。つまり、スネアだけに集中するということです。四分音符で叩いているハイハットとの重なり具合で、どこにスネアが配置されているかを掴みます。例えば、2つめのハイハットとスネアが重なっていれば、2拍目にスネアがあるということが簡単にわかります。他にも2つめのハイハットとスネアが重なっておらず、少し後ろにスネアがあり、しかし3つめのハイハットよりも前にあるとすれば、きっとこのスネアは2拍目の裏拍にあるのだろうと予想をたてることができます。あとはどれくらい裏なのかを集中して聴き取ればいいのです。
さて今までガイドラインのハイハットを4分音符で演奏してきましたが、実際には8分音符で演奏した方がよりビートを把握しやすいです。より細かいグリッドを提示することができるからです。方眼紙を想像してください。1平方センチメートルの方眼紙より、1平方ミリメートルの方眼紙の方が、より正確に対象を捉えることができるのと同じです。ただし、八分音符を正確に演奏する技術があることが前提として必要です。もし八分音符を演奏することが難しいようならば、これはやめておきましょう。そもそもこの場合、分析する対象があなたにとって難しすぎるのかもしれません。再生スピードを下げるか、対象を他のもっと簡単なものにすることをおすすめします。
さて、スネアを聞き取ることができたので、最後にハイハットです。ここで聞き取るべきは、ハイハットの配置されているタイミング、そしてクローズなのかオープンなのか、最後にハイハットの長さです。まずはハイハットの種類のことは気にせずに、配置だけを聴き取りましょう。そして次に、オープンの箇所を掴みます。そして最後に、クローズハイハットの中でも長い物と短い物を区別します。一つずつ順番に把握するようにしましょう。ハイハットはニュアンスが多彩で、ドラマーでない人間にはとても難しいのです。あせらずに慎重にいきましょう。
キック、スネア、ハイハットが聴き取れたので、あとはタムやクラッシュ、ライドを適宜採譜します。ビートの核が聴き取れていれば、これらの副次的な要素は比較的簡単に聴き取れるはずです。
さてこれらの要素を採譜したら、なんらかのメモをすることを私はオススメします。人によっては書き取ることを推奨しない人もいます。しかし私の考えでは、ビートをメモすることは、より難しいフレーズを覚えること、復習することをサポートしてくれます。メモされたフレーズはあなたの想像力次第で、とても遅いスピードで再生することができます。キックではじまって次にスネアがきて、ハイハットと重なるといった一連の手順の確認を、あなたの好きなスピードでおこなうことができるのです。もちろん実際の演奏を聴くことを軽視してはいけません。本当のグルーブは記すことができないからです。グルーブは紙の上ではなく実際のプレイの上にあります。しかし、このこととは別に紙に書くことによってビートを把握しやすくなる、ということも忘れないで欲しいのです。
ちなみに私は自作のノートに記録しています。こちらでも販売しています。
http://bccks.jp/bcck/121585/info
自分が分かれば何でも良いので、エクセルでこのようなシートを作るのをお勧めします。
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さて紙にメモしたフレーズを練習しましょう。ここでも聴き取ってきた順番と同じように、まずは均等に配置されたハイハットとキックからスタートしましょう。これができるようになったらスネアを足し、最後にハイハットを実際の演奏と同じものに入れ替えます。キック、スネアまでは比較的簡単にできますが、複雑なハイハットを加える際には多少困難さがあるでしょう。もし複雑なハイハットが演奏できない場合、思い切ってハイハットのことは忘れるのも一つの手です。完璧主義に陥らないことが音楽にとっては重要です。
さて練習をはじめたらそのフレーズが体にしみ込むまで、とにかく何回も繰り返して練習します。慣れないフレーズがあれば、その一拍だけを繰り返し練習します。大事なのはとにかくできるところから始めること。繰り返すこと。あきらめないことです。応援しています。