新宿ブックユニオンによくいきます。ディスクユニオンの本版で、紀伊国屋本店の隣にあります。普通の本屋さんに音楽関係の本は少ないのですが、ここはディスクユニオンの系列ですから、当然たくさんあります。特に中古を扱っていることが大きいです。音楽関係書籍はすぐに絶版になるため新刊では手に入らないアイテムが多いのですが、中古の扱いがあることで、そういったものが手に入る訳です。アマゾンで買えば良いじゃない、という声もありますが、中身をある程度読むと、はずれを引く可能性をぐっと下げることができます。現物を見れるのはこの時代においても、とてもいいことです。
先日いったときに目を引いたのは、ジャズメンの伝記でした。ジャコパトリアスやビルエヴァンス、チャーリーパーカー、マイルスデイヴィス。誰でも知っているミュージシャンの生まれて死ぬ過程が書かれています。特にこの中で、序盤と終焉が気になりました。なぜなら、それ以外の時期は当然一流のミュージシャンとして最前線で活動していた時期なのですから伝記を読まなくても耳に入ってきますが、そうでない時期、つまり生まれてからミュージシャンになるまで、とあと死ぬ間際は、なかなか伝記を読まないとまとまった情報がないのです。さらに、序盤はミュージシャンである僕の興味を強く引きつけます。何故ならどんな練習をしてきたのか、どんなバンドに所属しどんな音楽をやってきたのか、ということが知れるからです。つまりどうやって、あの、素晴らしいミュージシャンになったのかを知れるわけです。同じことやってもなれないけど…でもやらないとなれない。
で、ジャコの序盤なんだけど、ジャコはお父さんがドラマーでボーカリスト。本人も高校まではドラマーだった。そしてベースに転向。耳が非常に良く、1日練習して演奏現場にたった。練習のポイントはトライアド=つまり和音。ベーシストは楽器構造上、ピアノに比べると和音を認識しにくい。そこを徹底的に練習したことがジャコのスタイルに繋がっている。また、トランペットやバイオリンなどなんでも練習した。それに修理もした。それによってフラジオ=高次倍音を使った演奏にも習熟した。結果ハーモニクスを使うようになった。これは同じ原理だからね。前から提唱してたリズムがタイトなプレイヤーは元ドラマー理論に新たなサンプルが加わった。それからメロディアスなプレイをする人はボーカルにも関わりが深い理論。ジャコの場合は本人が小さい頃に歌でステージにあがるくらい歌をやっていた。親父はボーカリストでもある。それから、スケール練習など機械的な練習は結構やっているっぽい。これは単に数学的な法則だから、そう捉えてやらなきゃ、といっている。自分を現実的な人間だといっている。エレキを演奏しているのは、フロリダ?かな彼の地元では湿気が多すぎてウッドベースがすぐ壊れてしまうから、エレキが現実的。それに、ウッドベースは使い尽くされている。だから、エレキベースで新しい発見をしていかなきゃいけない、とも。現実的な彼は、現実の仕事にあわせて楽譜や、コードの読み方、演奏、テクニックを身につけて使った。R&Bの仕事がほとんどだった模様。
ジャコから学んだことまとめ
・ドラムを練習し続けて、リズムをタイトにしよう。
・メロディを歌ったり常に気を配ることが、音楽的な最短ルート。
・スケールやコードは数学的にフラットに理解しよう。適当にひかない。
・自分の時代のやりつくされていない機材を自分のものにしよう。
→自分の場合なんだろう。ローズやオルガンやピアノは既にやりつくされているかな。やはりシンセ?エフェクト?シンセリードかな。フィンガードラムは目立つね。
・衒学的な音楽理論ではなく、音楽を形にするために音楽理論を学ぼう。そしてすぐに使おう。
ちなみにジャコは最後は躁鬱病とアルコールとドラックによって最前線からはいったん退き、精神病院に入院した。しかしその後も全快はせず、仲間からの助けも拒み、結果、公園で自分の最大のキャリアである、ウェザーリポートの曲をラジカセから流しながら、
物乞いのようなことをやっていてようだ。そして、高級バーに入ろうとして入り口のセキュリティーに止められ、おそらくその過程で階段から落ちて、昏睡状態になった。おそらくジャコは統合失調用とかなんらかの先天的な病気の持ち主だった。僕は医者じゃないから正確な情報ではないけど、それから決してそういう病気への偏見を強めたい訳じゃないけど、ジャコがインタビューでも自分で行っていた強烈な集中力と記憶力は、いわゆる標準的な性質の物ではないと思われる。鬱と知性の関連や、鬱と芸術性の関連を示す研究も最近よくみる。
次、ビルエヴァンス。ビルエヴァンスは小さい頃はクラシックを習っていて、既に神童だった。途中から楽譜がないと演奏できないなんておかしいと思って、ジャズ的な道に進む。演奏と先生になる学位をとって大学を卒業。軍隊を引退後、24の頃に、音大で作曲をもう一度勉強している。そのころ、バッハやショパンの楽譜をかなり熱心に見ている。ボーカリストとやりたがっていたよう。歌の伴奏に力を入れていた。これはエヴァンスのスタイルを確立する上で重要な気がする。それから当時のピアノは大体ピッチがおかしかった。半音から全音低いことが普通にあった。その結果、エヴァンスは、周りがBbで演奏していても、全音あげてCで演奏しなくてはいけないような状況に常にあった。このことも演奏スタイルに影響を与えているのではないか。つまり、エヴァンスは、鍵盤の上をかなりシステマティックに見ているような気がする。それから、基礎的な、多分メロディとコードをしっかり着地させるということ、をまず勉強しなくてはいけない。その後に少し筒発展させていくんだ、といっている。この点はエヴァンスも非常に現実的な人間であることが表れている。それからエヴァンスのハーモニーはアドリブではない。かなり緻密に、スコアにはしないものの、前もって入念に作り上げられている。
エヴァンスから学んだことまとめ
・メロディとハーモニーという骨格をまず強固に持つこと
・これをハーモニーメロディーの点で堅実に発展させること
・ハーモニーの点では、バッハやショパンなど、過去の作品を参考にする(僕の場合はエヴァンスそのものでもいい)
・メロディの点では、修飾音的な技法をどんどん覚えて使うこと。
・演奏を通じて、少しずつ、拡張していけば良い。最初からコンテンポラリーに弾こうとしないこと。
ちなみにエヴァンスの晩年は、ドラッグと大切な人の喪失に覆われていた。長く寄り添った内縁の妻ではなく、新しい恋人と結婚すると、内縁の妻が自殺した。ピアノ教師の兄も原因不明の自殺。ちなみに父も重度のアルコール依存であったようだ。ジャコと同じように、遺伝的な何かを感じる。内臓も悪くなっていたが治療は受けず、死んでいった。
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