2013年2月5日火曜日

論文レビュー 竹内誠/音楽理論の数理的考察 : コード上のスケール(available note scale)

久しぶりにCiNiiを検索したら色々面白い論文を見つけたのでチェックしました。
せっかくのなのでレビューします。

竹内誠/音楽理論の数理的考察 : コード上のスケール(available note scale)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110008447752

☆概要

論文としては最悪だけど、色々なスケールを考えるきっかけを、シンプルに提示している、という点で有用。ただし斬新なアイデアではなく、まあみんなよくやってることかな、ってぐらい。

○よいところ

コード構成音の間を、考えうる全てのパターンで埋めることによって、スケールを生成するので、豊かなスケールバリエーションを作ることに成功している。
自由度が高い。

×悪いところ

そもそも、ダイアトニックスケールの定義を大幅に間違えている。
それから、ダイアトニックスケールとアベイラブルスケールを混同している節がある。
また、導き出したスケールのほとんどがダイアトニックスケールではない。
和声的短音階、オルタードスケール等の一般的に使われるスケールがでてこない。
(オルタードスケールはaugコードの部分でさりげなく出てきているが、何ら指摘なし)

「音楽理論が分かりずらいのは論拠が明示されていないためであり、それを数理的に明示することで分かりやすくする」と要旨で述べているが、なんら具体的な論拠なし。数理的には示されてない。

むしろ、根拠はないが、考えられるパターンを全て考えてみよう、って感じです。
これ、よくある普通の考え方ですよね。

詳細

コード構成音の、隣あう音同士間の音程は、長三度と短三度しかない。
(例えばCM7だったら、CとEの音程は三度、EとGの音程は短三度、GとBの音程は長三度なので、全て長三度か短三度だ)

長三度を、「全音―全音」、「半音―全音―半音」で割ってスケールをつくることをしてみよう。
また、短三度を「半音―全音」、「全音―半音」で割ってみることにしよう。
(その根拠は述べられているが、多分に間違えている)

例えば、CM7は…

(1)C-E 間は、
(1.1)C-D-E
(1.2)C-C#-D# E
の2パターンが考えられる。

(2)E-G間は、
(2.1)E-F-G
(2.2)E-F#-G
の2パターンが考えられる。

(3)G-B間は
(3.1)G-A-B
(3.2)G-G#-A#-B
の2パターンが考えられる。

 
この(1)、(2)、(3)を組み合わせると様々なスケールが考えられる。
例えば、(1.1)、(2.2)、(3.1)を選択してみると、
C-D-E-F#-G-G#-A#-B-Cというスケールが生成される。
途中まではリディアンみたいだけど、一般的なスケール名はないスケールだね。
かなりコンテンポラリーなサウンドになってしまうけど、使えなくはないね。
というかこれを使うにはかなりセンスがいるね。
けど面白い。

課題と提案

特に気になるのが、普通の音楽に頻繁にでてくる和声的短音階が導き出せていないことである。
へんてこなスケールはたくさん出てくるのに。

その理由は簡単で、以下の2点に尽きる。
(1)考察しているコードにCmM7がでてこない。
(2)長三度の割り方に、「半音―短三度」、「短三度―半音」という選択肢が抜けている。

逆にいえばこれを考察に入れることで、全てのスケールを導き出すことができる。
これを加えることで、かなり実用的になる。
なぜ加えなかったのだ!!!!


(1)
例えば、Cの和声的短音階のことを考えてみよう。
これにCのルート持つコードを無理やりつけるとすれば、CmM7となる。
これ以外には考えずらい。(シックスコードはなし。構成音間が3度ではないため)
mM7のコードがないために、そもそも和声的短音階のことを考えることができないのだ。

(2)
引き続きCの和声的短音階のことを考えよう。
ここで問題になるのは、C-bE-G-Bのうち、G-B間である。
G-B間はこの論文にしたがうと、G-A-BもしくはG-#G-#A-Bとしか分割できない。
しかし、和声的短音階では、ここはG-#G-Bとなる。
つまり、この論文では考察に含まれていない「半音―短三度」となるわけだ。

まとめ

もともとスケールってそういうもんですよね!!!!





0 件のコメント:

コメントを投稿